ブラッド・ピット主演作品。本年のアカデミー賞でオスカーを逃した作品ですが、実際に観てみて、なるほどな、と思われました。これはちょっとアカデミー賞はないな、と(メイクアップ賞は獲れましたが)。
巷では非常に評判が良い作品のようです。まぁ、確かに面白かった。所々はさまれた「私は雷に7回打たれた」のシーンや、デイジーが事故にあうシーンの仏映画っぽい演出など、細かい技も効いているし、それになりより、ブラッド・ピットがどんどん若返っていくのも面白い。そう、確かに面白かったのです。ですが、後に残るものが何もないのはなぜ? これだけの長い作品(167分)を観て、「面白かった」としか感想がないのも情けないものですが、ほんとにそれしか感想がない。あえて付け足すなら「で、何が言いたかったのよ?」って感じですね。
原作はスコット・フィッツジェラルドの短編ということで、ちょっと納得。未読ですがフィッツジェラルドらしい寓話性の高い作品なのでしょう。時間を遡るように時を刻む時計、その時計のように人生を遡る主人公…。老人と幼児の対比、老いとは何か、生きるとはどういう意味なのか、フィッツジェラルドなら短編小説で小粋に描くのでしょう。たぶん、「短編小説」というところにミソがあるのです。映像化してしまうと、行間がなくなってしまう。であるが故に、映画は物足りないものになってしまう。描いたようで描けていないもののほうが多いのでしょう。おそらく、半分の時間で原作を読んだほうがうんと感じるものがあるはずです。
とはいえ、ブラピ好きさんや、ケイト・ブランシェットのファンの方は見て損はないです。
ブラピがどんどん若返っていくのは、ほとんど冗談みたいでとにかく楽しいし。
(ほんとは笑うところじゃないのに、なんだか笑えてしまうのがこの作品の悲しいところ…)
ちなみに、特に「数奇な運命」とは私には思えませんでした。
外見と内面のギャップを除けば、むしろ恵まれた人生でしょう。これもまた、とってもフィッツジェラルドっぽい。繰り返しますが、この淡々とした感じは、フィッツジェラルドが原作だと思えば納得のいくものだけれど、肝心のフィンチャー監督は、いったい何を描きたかったのか不明。
特撮技術が発達したが故に、かつては映画化など考えられなかった作品が映像化されていきます。だけれど、(この作品もですが)ファンタジーは想像力で楽しむもので、「映像の力」はその大切な「想像力」を剥ぎ取ってしまう。残念なことです。
それにしても、この手の映画が普通に評価が高いのは、よく分からない現象。「ショーシャンクの空に」が異常に高い人気を博しているのと理由は同じなのかな。