エディット・ピアフ 愛の讃歌
LA MOME/THE PASSIONATE LIFE OF EDITH PIAF/LA VIE EN ROSE
文字通りの”ピアフの情熱的人生”を描いた本作、有名な人物ですからいまさら何を、という気もしていたのですが、やはり映画の力はすごい。
一つには、「シャンソンの圧倒的勝利」。
ピアフの歌が、彼女が死に直面した際に見た「自身の人生の走馬灯」をつないでいく、そんな雰囲気の映画です。
そして、色からの連想。たとえば子供時代に戯れに使ってみた口紅の赤…・
映像と音楽(歌)を、精緻に組み合わせた作品です。ピアフに感情移入をしなけえば(それがものすごく難しい気もするけれど…)、ついていけない展開かもしれません。もしかしたら作品では描かれていないピアフに関する物語を総動員して、脳内補完しないといけないのかも。ですから、「エディット・ピアフのことが知りたいからこの映画を観る」というのは、間違った見方のように思います。
私はとても”伝記好き”なので、穿って観てしまうせいもあるかと思うのですが…なぜだか涙がこみ上げてくる瞬間がありました。
”歌うこと”でしか彼女でありえず、そんな彼女を世界は愛した。なのに、最愛の人を失い、歌うことさえできない晩年。私が知識で知っていたピアフは、そういう人であったし、この映画もそんな彼女を描いています。なのに、なぜかもっと真に迫るものがあるのは、ピアフが乗り移ったかのようなマリオン・コティヤールの熱演によるものでしょうか?
「愛を捧げるわ、皆に」
ステージでのピアフの一言に、彼女が切望してやまなかったものを想い知らされます。
「愛の讃歌」「バラ色の人生(ラヴィアンローズ)」などの名曲はもちろん、”彼女”の歌声が楽しめます。ですが、なんというか「そういうもののためにこの映画を見るべきではない」という気がします。才能があり、同時に愚かでもあったひとりの女性の物語であり、人を愛すことを誰よりも求めながら、愛に殉じることもできなかった不幸な女性の物語。
うんと心をフランス・モードにしてお楽しみください。
マリオン・コティヤールは本作でアカデミー主演女優賞を受賞。納得の演技です。
比較するのもおかしな話ですが、ピアフより8年後に生れ、14年間長く生きた20世紀最高のソプラノ歌手、マリア・カラスの素敵な映画をご紹介しておきます。2002年の作品で、日本でも単館系で公開されていて話題を呼びました。
こちらは物語は完全フィクション。
映画作品として比べるなら、『マリア・カラス』のほうがより親切で、より分かりやすく、より映画らしいと思います(ピアフのほうが、おそらく”ツウ”好みの凝りかたなので…)。
たぶん、マリア・カラスをご存じななく、オペラに興味がない方でも、歌うことを愛したマリア・カラスがすんなりと胸に落ち着く作品だと思います。
私の個人的な好みでは、こちらの歌姫に軍配が上がります。単にシャンソンよりオペラのが好き、というだけな気もしますが、この作品で描かれた「強そうで弱く、そして誇り高い」カラスの、なんとも危ういバランスが好きです。
オペラ歌手というのは、その絶頂期はとても短いものです。
一方で、歌うことが好きで、そのために生れてきたような才能があって、それなのに歌うことで声をすり減らしていく…なんとも切なく、残酷です。そして、その事実に向き合い、受け入れることは本当に難しいことでしょう。
スポーツでも何でもそうですが「引き際」というのはとても難しくて、「一番いいときに終わりたい」というプライドと、「それでも続けたい」と思う己の思いのせめぎあいというのは、大変なものがあるように思います。この映画の中で、カラスが出した答えは・・・ここだけは、私は納得いかないのですが、映画だしまぁいいでしょう。
ともかく、オペラのアリアは退屈と思っている方、ぜひこの作品でカラスの歌う「カルメン」をお聴きください。退屈なのは歌のせいではないということが、伝わってくると思います。
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文字通りの”ピアフの情熱的人生”を描いた本作、有名な人物ですからいまさら何を、という気もしていたのですが、やはり映画の力はすごい。
一つには、「シャンソンの圧倒的勝利」。
ピアフの歌が、彼女が死に直面した際に見た「自身の人生の走馬灯」をつないでいく、そんな雰囲気の映画です。
そして、色からの連想。たとえば子供時代に戯れに使ってみた口紅の赤…・
映像と音楽(歌)を、精緻に組み合わせた作品です。ピアフに感情移入をしなけえば(それがものすごく難しい気もするけれど…)、ついていけない展開かもしれません。もしかしたら作品では描かれていないピアフに関する物語を総動員して、脳内補完しないといけないのかも。ですから、「エディット・ピアフのことが知りたいからこの映画を観る」というのは、間違った見方のように思います。
私はとても”伝記好き”なので、穿って観てしまうせいもあるかと思うのですが…なぜだか涙がこみ上げてくる瞬間がありました。
”歌うこと”でしか彼女でありえず、そんな彼女を世界は愛した。なのに、最愛の人を失い、歌うことさえできない晩年。私が知識で知っていたピアフは、そういう人であったし、この映画もそんな彼女を描いています。なのに、なぜかもっと真に迫るものがあるのは、ピアフが乗り移ったかのようなマリオン・コティヤールの熱演によるものでしょうか?
「愛を捧げるわ、皆に」
ステージでのピアフの一言に、彼女が切望してやまなかったものを想い知らされます。
「愛の讃歌」「バラ色の人生(ラヴィアンローズ)」などの名曲はもちろん、”彼女”の歌声が楽しめます。ですが、なんというか「そういうもののためにこの映画を見るべきではない」という気がします。才能があり、同時に愚かでもあったひとりの女性の物語であり、人を愛すことを誰よりも求めながら、愛に殉じることもできなかった不幸な女性の物語。
うんと心をフランス・モードにしてお楽しみください。
マリオン・コティヤールは本作でアカデミー主演女優賞を受賞。納得の演技です。
比較するのもおかしな話ですが、ピアフより8年後に生れ、14年間長く生きた20世紀最高のソプラノ歌手、マリア・カラスの素敵な映画をご紹介しておきます。2002年の作品で、日本でも単館系で公開されていて話題を呼びました。
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こちらは物語は完全フィクション。
映画作品として比べるなら、『マリア・カラス』のほうがより親切で、より分かりやすく、より映画らしいと思います(ピアフのほうが、おそらく”ツウ”好みの凝りかたなので…)。
たぶん、マリア・カラスをご存じななく、オペラに興味がない方でも、歌うことを愛したマリア・カラスがすんなりと胸に落ち着く作品だと思います。
私の個人的な好みでは、こちらの歌姫に軍配が上がります。単にシャンソンよりオペラのが好き、というだけな気もしますが、この作品で描かれた「強そうで弱く、そして誇り高い」カラスの、なんとも危ういバランスが好きです。
オペラ歌手というのは、その絶頂期はとても短いものです。
一方で、歌うことが好きで、そのために生れてきたような才能があって、それなのに歌うことで声をすり減らしていく…なんとも切なく、残酷です。そして、その事実に向き合い、受け入れることは本当に難しいことでしょう。
スポーツでも何でもそうですが「引き際」というのはとても難しくて、「一番いいときに終わりたい」というプライドと、「それでも続けたい」と思う己の思いのせめぎあいというのは、大変なものがあるように思います。この映画の中で、カラスが出した答えは・・・ここだけは、私は納得いかないのですが、映画だしまぁいいでしょう。
ともかく、オペラのアリアは退屈と思っている方、ぜひこの作品でカラスの歌う「カルメン」をお聴きください。退屈なのは歌のせいではないということが、伝わってくると思います。
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