レビューになりきれない映画評。でも、独自路線でまったりと語ります。
『モーターサイクル・ダイアリーズ』―長い旅の終りに始まりがある。
ワタクシ好みの地味な秀作です。
ここで言う「秀作」とは作り手の心と映画の良心が伝わってくる作品。もちろん、「心」があればどんなものでも秀作かというとそうではなく、題材が良くなければならず、それを表現するために適切な方法がとられていること…。こういった作品は、鑑賞後の余韻を楽しめる。何度でも観たいと思わせる力が、作品自体にあります。
チェ・ゲバラの青春時代を描いた本作、いろいろな意味で裏切られました。
ゲバラという名の音からも、革命家という経歴も、猛々しく激しい人物を想像していました。ところが、「モーターサイクル・ダイアリーズ」で描かれたエルネスト(チェ)は、「母さん、僕は無力です」と母への手紙に綴る、繊細な若者です。青春時代(そんなものが私にもあったなぁ)の迷いや葛藤、まっすぐっさなどが、真摯に、こちらの心に染み込んでくるように描かれています。稀代の革命家も、普通の青年だったんだなぁ、と素直に受け止められる。
そして、私は本当に南米について何も知らなかったんだと改めて実感しました。
ブエノスアイレスの町並みの美しさにノックアウトされ、広がる草原、峻険な山々、ボロボロのバイクで走る(えらく転んでましたが:笑)南米の大地の素晴らしさに、素直に感動しました。南米というとアマゾンやら遺跡やらしかイメージがなかった私には、本当に素直な驚きです。
ところどころ、カメラがハンディに持ち変えられて、ドキュメンタリー風になっているのも秀逸で、「国籍」という「無意味な線引き」に気付くゲバラの心の動きを際立てている。
こういった現実を理解したとき、非暴力の博愛主義者になるのか、革命家になるのかというのは、本当に僅かの動機の差でしかないのだと、ゲバラの青春から知りました。南アメリカという数々の問題を抱えた地であったからこそ、彼の感性は「革命」を選んだ。旅を終えて僅か8年後、ゲバラ31歳、キューバ革命が達成されたのでした。
旅の始まりには自分を「無力だ」言った若者は、39年という短い人生の後半をほとんどを「自ら行動すること」に費やした。そんな彼の人生の強さを(もちろん革命は起こしませんけど)少しだけ分けてもらいたい、と思います。
本作はこの「彼が生きた人生」を描くことはなく、あくまでも"原点"で終わっています。
ですが、どんな伝記的映画よりも効果的に彼の生き方を示している。ゲバラを知りたければ、(おそらく)ここからしか始まりません。
伝記的映画で、この映画のように静かにストイックに描くものは、実はそう多くはありません。人(観客)はいつもドラマティックなものを求めるし、作り手も、どうしても「脚色」してしまいがちです。そのことがかえって「映画らしく」かつ「本当は違ったんだろうな」というように、人物を「作り上げて」しまう。
この映画からはそういった作為が感じられず、落としどころを南アメリカの風景とともに観客に投げ出してしまっている。ゲバラは実在の人物であり、彼自身の作った歴史がある以上、作り物の映画はその事実を決して超えることはできない、という「作り手の良心」と、ゲバラへの敬意を、私は感じます。
そしてゲバラの青春を追体験させてくれるこの作品に、多大なる感謝を。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ラストに共に旅をした年上の友人、アルベルト(本人!)が登場します。映画の中では、酒好きで、口説き上手で陽気な若者が、(映画当時で)80歳のおじいちゃん。ゲバラが亡くなってからも40年の時間が流れ、ご存命であれば今年(2008年)80歳…。そんなラストになとなくじんわり。だってカストロ元議長だってまだ生きてるんだから…と現実に引き戻されるとつまりませんので、お気をつけくださいませ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「若い頃」に、世界のどこでもいいから「縦断の旅」やら「横断の旅」、それに類する本物の旅をやったことがある方は、ものすごく気に入る映画だと思います。文字通りのロードムービーですから。本物の「旅」をしたことがある人にしかわからないものがあります。そして「あの頃は若かった」と振り返ったとき、そこに凝縮された経験の価値にあらためて気付く、そんなきっかけにこの映画がなるかもしれません。
ワタクシも思い出します。東アフリカのサバンナや砂漠を、砂埃を巻き上げて四駆で走った日々を。あの頃の私は・・・と、過去にさかのぼって「サバンナ・サファリ・ダイアリーズ」を執筆してみようかしらん?
未読ですが読んでみようかな。ゲバラ自身の書です。
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ここで言う「秀作」とは作り手の心と映画の良心が伝わってくる作品。もちろん、「心」があればどんなものでも秀作かというとそうではなく、題材が良くなければならず、それを表現するために適切な方法がとられていること…。こういった作品は、鑑賞後の余韻を楽しめる。何度でも観たいと思わせる力が、作品自体にあります。
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チェ・ゲバラの青春時代を描いた本作、いろいろな意味で裏切られました。
ゲバラという名の音からも、革命家という経歴も、猛々しく激しい人物を想像していました。ところが、「モーターサイクル・ダイアリーズ」で描かれたエルネスト(チェ)は、「母さん、僕は無力です」と母への手紙に綴る、繊細な若者です。青春時代(そんなものが私にもあったなぁ)の迷いや葛藤、まっすぐっさなどが、真摯に、こちらの心に染み込んでくるように描かれています。稀代の革命家も、普通の青年だったんだなぁ、と素直に受け止められる。
そして、私は本当に南米について何も知らなかったんだと改めて実感しました。
ブエノスアイレスの町並みの美しさにノックアウトされ、広がる草原、峻険な山々、ボロボロのバイクで走る(えらく転んでましたが:笑)南米の大地の素晴らしさに、素直に感動しました。南米というとアマゾンやら遺跡やらしかイメージがなかった私には、本当に素直な驚きです。
ところどころ、カメラがハンディに持ち変えられて、ドキュメンタリー風になっているのも秀逸で、「国籍」という「無意味な線引き」に気付くゲバラの心の動きを際立てている。
こういった現実を理解したとき、非暴力の博愛主義者になるのか、革命家になるのかというのは、本当に僅かの動機の差でしかないのだと、ゲバラの青春から知りました。南アメリカという数々の問題を抱えた地であったからこそ、彼の感性は「革命」を選んだ。旅を終えて僅か8年後、ゲバラ31歳、キューバ革命が達成されたのでした。
旅の始まりには自分を「無力だ」言った若者は、39年という短い人生の後半をほとんどを「自ら行動すること」に費やした。そんな彼の人生の強さを(もちろん革命は起こしませんけど)少しだけ分けてもらいたい、と思います。
本作はこの「彼が生きた人生」を描くことはなく、あくまでも"原点"で終わっています。
ですが、どんな伝記的映画よりも効果的に彼の生き方を示している。ゲバラを知りたければ、(おそらく)ここからしか始まりません。
伝記的映画で、この映画のように静かにストイックに描くものは、実はそう多くはありません。人(観客)はいつもドラマティックなものを求めるし、作り手も、どうしても「脚色」してしまいがちです。そのことがかえって「映画らしく」かつ「本当は違ったんだろうな」というように、人物を「作り上げて」しまう。
この映画からはそういった作為が感じられず、落としどころを南アメリカの風景とともに観客に投げ出してしまっている。ゲバラは実在の人物であり、彼自身の作った歴史がある以上、作り物の映画はその事実を決して超えることはできない、という「作り手の良心」と、ゲバラへの敬意を、私は感じます。
そしてゲバラの青春を追体験させてくれるこの作品に、多大なる感謝を。
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ラストに共に旅をした年上の友人、アルベルト(本人!)が登場します。映画の中では、酒好きで、口説き上手で陽気な若者が、(映画当時で)80歳のおじいちゃん。ゲバラが亡くなってからも40年の時間が流れ、ご存命であれば今年(2008年)80歳…。そんなラストになとなくじんわり。だってカストロ元議長だってまだ生きてるんだから…と現実に引き戻されるとつまりませんので、お気をつけくださいませ。
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「若い頃」に、世界のどこでもいいから「縦断の旅」やら「横断の旅」、それに類する本物の旅をやったことがある方は、ものすごく気に入る映画だと思います。文字通りのロードムービーですから。本物の「旅」をしたことがある人にしかわからないものがあります。そして「あの頃は若かった」と振り返ったとき、そこに凝縮された経験の価値にあらためて気付く、そんなきっかけにこの映画がなるかもしれません。
ワタクシも思い出します。東アフリカのサバンナや砂漠を、砂埃を巻き上げて四駆で走った日々を。あの頃の私は・・・と、過去にさかのぼって「サバンナ・サファリ・ダイアリーズ」を執筆してみようかしらん?
未読ですが読んでみようかな。ゲバラ自身の書です。
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プロフィール
Author:わさきち
にゃんこの舟盛りの映画・アニメレビューを独立させてみました。ほぼ連動してますが、こちらのが若干マニアックでクドイ(苦笑)かも・・・。
ネタばれは書きません。
何事もポジティブにとらえたい性質なので、批評は前向きです。
貶すところしかないようは作品は取り上げません。
こんなスタンスです。
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