レビューになりきれない映画評。でも、独自路線でまったりと語ります。
30年前の魅力、衰えず。【悪魔の手毬唄】
BS-i で放映していたので観ていたのですが、あまりの無粋なCMカットに挫折。
そう言えば日本映画専門チャンネルで昔録画してたかも! とゴソゴソと探したらありました、デジタルリマスター版。急きょそちらに変えて、けっきょく全部見てしまいました。
市川崑監督といえば、今年2月の訃報がまだ記憶に新しいところです。
戦後日本の映画界を牽引してきた巨匠の一人であり、映画だけにとどまらない多彩な活躍をされた方でした。
多作でも知られた監督で、横溝正史原作の金田一シリーズでは、『犬神家の一族』(1976)、『悪魔の手毬唄』(1977)、『獄門島』(1977)、『女王蜂』(1978)、『病院坂の首縊りの家』(1979)、『八つ墓村』(1996年)、そしてリメイクの『犬神家の一族』(2006)の7作を撮っています。
金田一耕介はなんども映画化され、テレビ化もされているので、私の中でもいろんなバージョンがごちゃごちゃになってしまっているのですが、出色は市川版『犬神家の一族』なのは周知の通りです。
『犬神家』は、横溝文学と市川ワールドの"コラボ"で、独特の作品に仕上がっていますが、原作ファンでもある金田一フリークの私としては、『悪魔の手毬唄』は負けずとも劣らない作品だと思います。
* * * * * *
全編通して映像が暗く、明度を押さえているのは市川版では珍しい。あの、独特の酔うような明暗の切り替えは、本作では少し控え目。ただしカメラワークは出色で、引きで見せる旧家の屋根瓦や山々の風景、ストップモーションでの表現など、(現在では珍しくもないのですが)やはり素晴らしい。
ストーリーも比較的原作に忠実に作り上げています。横溝正史という人は非常にくどい。「推理小説なんだから早く一人くらい死んでくれろ」と不謹慎にも言いたくなるものもあり、この『悪魔の手毬唄』もそういった作品の一つです。
ですから映画でも、最初の殺人まで20分以上かかってしまっていますし、タイトルクレジットも「そういえばクレジットがまだだったか」という感じに遅い。ですが、結果的にこのフリでもって、残りの二時間、すっかりと市川ワールドにはまり込んでしまう、ということになるのです。
今観れば、岸恵子が出てきた瞬間に「この人が犯人だ!」と分かってしまうのですが、原作では影の薄い立花捜査主任がお約束の「よし! わかった!!」を連発するのも、金田一のフケが落ちるのも、シリアスな中にも娯楽性を求めていた市川監督らしい。こういった「遊び」の感覚が、市川監督の映画界での立ち位置を象徴しているように思います。
役者さんたちを見回しても、どうしても作品の中で浮いてしまっているように見える「あまりにダンディすぎる若山富三郎」も、演出の一つでしょう。自身のこだわりを守りつつ、観客を決して置いてきぼりにしないエンターテイメント精神がそこにはあります。
結局、こういった市川監督の独特の感覚が、日本の映画界の中での評価を微妙にしてしまっていたのですが、今後、歴史的な評価が自ずと定まっていくことは間違いありません。
* * * * * *
市川版金田一シリーズは、後世に多大な影響を与えた名シーンを生み出しています。
本作で言うならば、被害者の祖母が「一羽の雀の言うことにゃ…」と「手毬唄」を唄うシーン。今は亡き「日本のおばあちゃん」原ひさ子さんが、絶妙なボケっぷりを発揮。
(フリークならば絶対にあの「手毬唄」を唄えると思うのですが、私はもちろん2番までは歌えます!!)
金田一耕介への(そして市川崑監督への)オマージュである、警部補・古畑任三郎シリーズの"今、蘇る死"を、必ずご覧ください(こちらの手毬唄は出だししか唄えませんが…)。
♪アヘアヘアヘ♪・・・って・・・
そして特筆すべきはラスト、岸恵子さんの告白シーンは秀逸です。
このシーンは『犬神家の一族』の新旧お二人(高嶺美枝子と冨士純子)の告白シーンとあわせて、女優の技量というか、役者魂を試された名シーンです。
同じような岸恵子さんの告白シーンを、『天河伝説殺人事件』(1991)で観ることができますが、監督も同じで、かつご本人がやっているのだから「パクリ」ではなくて、やはりファン・サービスなのでしょう。
天河伝説殺人事件
↑ ↑ ↑
そんなに悪くないですよ。なぜかアマゾンのイメージもないんですが・・・。
それほど質が落ちていなかった頃の内田康夫原作。
能のシーンなど、90年代の市川監督の代表作と言ってもいいくらいのこだわりの映像美が楽しめますよ。
* * * * * *
原作大流行の当時はまだ生まれてもおらず、映画の初演当時は小学校にも上がっておらず、それでもこの30年間近く、ずいぶんと楽しませていただいております。映画に、感謝。
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そう言えば日本映画専門チャンネルで昔録画してたかも! とゴソゴソと探したらありました、デジタルリマスター版。急きょそちらに変えて、けっきょく全部見てしまいました。
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市川崑監督といえば、今年2月の訃報がまだ記憶に新しいところです。
戦後日本の映画界を牽引してきた巨匠の一人であり、映画だけにとどまらない多彩な活躍をされた方でした。
多作でも知られた監督で、横溝正史原作の金田一シリーズでは、『犬神家の一族』(1976)、『悪魔の手毬唄』(1977)、『獄門島』(1977)、『女王蜂』(1978)、『病院坂の首縊りの家』(1979)、『八つ墓村』(1996年)、そしてリメイクの『犬神家の一族』(2006)の7作を撮っています。
金田一耕介はなんども映画化され、テレビ化もされているので、私の中でもいろんなバージョンがごちゃごちゃになってしまっているのですが、出色は市川版『犬神家の一族』なのは周知の通りです。
『犬神家』は、横溝文学と市川ワールドの"コラボ"で、独特の作品に仕上がっていますが、原作ファンでもある金田一フリークの私としては、『悪魔の手毬唄』は負けずとも劣らない作品だと思います。
全編通して映像が暗く、明度を押さえているのは市川版では珍しい。あの、独特の酔うような明暗の切り替えは、本作では少し控え目。ただしカメラワークは出色で、引きで見せる旧家の屋根瓦や山々の風景、ストップモーションでの表現など、(現在では珍しくもないのですが)やはり素晴らしい。
ストーリーも比較的原作に忠実に作り上げています。横溝正史という人は非常にくどい。「推理小説なんだから早く一人くらい死んでくれろ」と不謹慎にも言いたくなるものもあり、この『悪魔の手毬唄』もそういった作品の一つです。
ですから映画でも、最初の殺人まで20分以上かかってしまっていますし、タイトルクレジットも「そういえばクレジットがまだだったか」という感じに遅い。ですが、結果的にこのフリでもって、残りの二時間、すっかりと市川ワールドにはまり込んでしまう、ということになるのです。
今観れば、岸恵子が出てきた瞬間に「この人が犯人だ!」と分かってしまうのですが、原作では影の薄い立花捜査主任がお約束の「よし! わかった!!」を連発するのも、金田一のフケが落ちるのも、シリアスな中にも娯楽性を求めていた市川監督らしい。こういった「遊び」の感覚が、市川監督の映画界での立ち位置を象徴しているように思います。
役者さんたちを見回しても、どうしても作品の中で浮いてしまっているように見える「あまりにダンディすぎる若山富三郎」も、演出の一つでしょう。自身のこだわりを守りつつ、観客を決して置いてきぼりにしないエンターテイメント精神がそこにはあります。
結局、こういった市川監督の独特の感覚が、日本の映画界の中での評価を微妙にしてしまっていたのですが、今後、歴史的な評価が自ずと定まっていくことは間違いありません。
市川版金田一シリーズは、後世に多大な影響を与えた名シーンを生み出しています。
本作で言うならば、被害者の祖母が「一羽の雀の言うことにゃ…」と「手毬唄」を唄うシーン。今は亡き「日本のおばあちゃん」原ひさ子さんが、絶妙なボケっぷりを発揮。
(フリークならば絶対にあの「手毬唄」を唄えると思うのですが、私はもちろん2番までは歌えます!!)
金田一耕介への(そして市川崑監督への)オマージュである、警部補・古畑任三郎シリーズの"今、蘇る死"を、必ずご覧ください(こちらの手毬唄は出だししか唄えませんが…)。
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♪アヘアヘアヘ♪・・・って・・・
そして特筆すべきはラスト、岸恵子さんの告白シーンは秀逸です。
このシーンは『犬神家の一族』の新旧お二人(高嶺美枝子と冨士純子)の告白シーンとあわせて、女優の技量というか、役者魂を試された名シーンです。
同じような岸恵子さんの告白シーンを、『天河伝説殺人事件』(1991)で観ることができますが、監督も同じで、かつご本人がやっているのだから「パクリ」ではなくて、やはりファン・サービスなのでしょう。
天河伝説殺人事件
↑ ↑ ↑
そんなに悪くないですよ。なぜかアマゾンのイメージもないんですが・・・。
それほど質が落ちていなかった頃の内田康夫原作。
能のシーンなど、90年代の市川監督の代表作と言ってもいいくらいのこだわりの映像美が楽しめますよ。
原作大流行の当時はまだ生まれてもおらず、映画の初演当時は小学校にも上がっておらず、それでもこの30年間近く、ずいぶんと楽しませていただいております。映画に、感謝。
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プロフィール
Author:わさきち
にゃんこの舟盛りの映画・アニメレビューを独立させてみました。ほぼ連動してますが、こちらのが若干マニアックでクドイ(苦笑)かも・・・。
ネタばれは書きません。
何事もポジティブにとらえたい性質なので、批評は前向きです。
貶すところしかないようは作品は取り上げません。
こんなスタンスです。
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