レビューになりきれない映画評。でも、独自路線でまったりと語ります。
心優しき人々の住まう楽園は今…【セブン・イヤーズ・イン・チベット】
どうして普通に「チベットの7年間」というタイトルにしなったのか、不思議だ。
ともかく、良作です。
Introduction
1939年、秋。ハラーは世界最高峰の制覇を目指して、ヒマラヤ山脈へと向かった。ところが、第二次世界大戦の勃発により、運命は思わぬ方向へ。インドでイギリス軍の捕虜となった彼は、登山家仲間とともに脱走。ヒマラヤ山脈を越える決死の逃避行の末、チベットの聖地にたどりつくが、そのチベットも歴史の大きなうねりに飲み込まれてしまう。激動のチベットに滞在した7年の歳月、少年ダライ・ラマとの魂の交流を通して、ハラーは自らを再発見し故国に残した家族への愛に目覚めていく・・・。
公式サイトより。
* * * * * * * * * * * * * * *
高慢でハナモチならないハラーを、ブラッド・ピットが好演しています。「地上の楽園」チベットでの生活を通して、あるいはダライ・ラマとの交流を通して、ハラーの西洋的な「自我」が変化していく様が、細やかに描かれている。即位式の際には、自然なふるまいで五体投地をする彼を見ると、本当に仏陀の教えに触れたかのように思われます。この作品の代償に、彼は中国への入国を禁じられていますが、あんな国に行く必要もないでしょうし、この作品自体の価値のが高いはず。
少年ダライ・ラマの純粋な好奇心の輝きのも、心打たれます。やんごとなき身でありながら、それに頓着しない少年の純粋さに、平穏な時代に生きられたらよかったのに、と思わずにおれません。いまだ祖国に戻ることもできない険しい彼の人生の道のりを思うと、本当にこのままではいけない、と思うのです。
本編のほとんどはアルゼンチンで撮影されたということですが、映像的にも非常に美しい作品です。ヨーヨー・マの奏でるチェロも素晴らしく、「ストーリー」「配役」「映像」「音楽」のバランスに優れた佳作です。政治的な意図を排除して考えても、一度は観る価値のある映画でしょう。
私は本当は「実話をもとにした映画」というのは(というか、そういう表現が)好きではありません。
例えば「私小説」が文学の表現形式として定着し、描かれた「個人の経験」を実話とは言わないように、実体験を綴ったものであっても「実話」云々はすでに問題ではない。すべての映画は、フィクションであることには間違いないわけで、ノン・フィクションではありえない。ですから、『セブン・イヤーズ・イン・チベット』も、本来なら「チベットの真実を知る」なんて力をこめて観るのではなく、純粋に映画として鑑賞すればいいし、そうできる作品です。チベット問題が現在進行中ではなく、すでに「歴史の一部」となっているのであれば、この映画はもっと評価されるであろうのに、と残念です。
一方で、この映画を通して一人でも多くの方が、チベットの人々について考えることができれば、よいとも思う。北京五輪のスローガンは「一つ世界、一つの夢」。彼らが言う「一つ」は一方ではチベット人という独自の文化を持った人々を力でねじふせて国家に組み込むことです。そして、彼らが言う「世界」にはチベット人はたぶん含まれていない。大国はいつの時代にも自分たちの論理を持っていて、それが世界の歴史をつくりあげてきた。日本も例外ではありません。それでも、中国の虚栄に満ち満ちた五輪を楽しむことはできない。
遠い将来、「歴史」が正しく中国を評価するようになることを、願います。
ともかく、良作です。
![]() | セブン・イヤーズ・イン・チベット〈ニューマスター版〉 (2005/11/25) ブラッド・ピットデヴィッド・シューリス 商品詳細を見る |
Introduction
1939年、秋。ハラーは世界最高峰の制覇を目指して、ヒマラヤ山脈へと向かった。ところが、第二次世界大戦の勃発により、運命は思わぬ方向へ。インドでイギリス軍の捕虜となった彼は、登山家仲間とともに脱走。ヒマラヤ山脈を越える決死の逃避行の末、チベットの聖地にたどりつくが、そのチベットも歴史の大きなうねりに飲み込まれてしまう。激動のチベットに滞在した7年の歳月、少年ダライ・ラマとの魂の交流を通して、ハラーは自らを再発見し故国に残した家族への愛に目覚めていく・・・。
公式サイトより。
高慢でハナモチならないハラーを、ブラッド・ピットが好演しています。「地上の楽園」チベットでの生活を通して、あるいはダライ・ラマとの交流を通して、ハラーの西洋的な「自我」が変化していく様が、細やかに描かれている。即位式の際には、自然なふるまいで五体投地をする彼を見ると、本当に仏陀の教えに触れたかのように思われます。この作品の代償に、彼は中国への入国を禁じられていますが、あんな国に行く必要もないでしょうし、この作品自体の価値のが高いはず。
少年ダライ・ラマの純粋な好奇心の輝きのも、心打たれます。やんごとなき身でありながら、それに頓着しない少年の純粋さに、平穏な時代に生きられたらよかったのに、と思わずにおれません。いまだ祖国に戻ることもできない険しい彼の人生の道のりを思うと、本当にこのままではいけない、と思うのです。
本編のほとんどはアルゼンチンで撮影されたということですが、映像的にも非常に美しい作品です。ヨーヨー・マの奏でるチェロも素晴らしく、「ストーリー」「配役」「映像」「音楽」のバランスに優れた佳作です。政治的な意図を排除して考えても、一度は観る価値のある映画でしょう。
私は本当は「実話をもとにした映画」というのは(というか、そういう表現が)好きではありません。
例えば「私小説」が文学の表現形式として定着し、描かれた「個人の経験」を実話とは言わないように、実体験を綴ったものであっても「実話」云々はすでに問題ではない。すべての映画は、フィクションであることには間違いないわけで、ノン・フィクションではありえない。ですから、『セブン・イヤーズ・イン・チベット』も、本来なら「チベットの真実を知る」なんて力をこめて観るのではなく、純粋に映画として鑑賞すればいいし、そうできる作品です。チベット問題が現在進行中ではなく、すでに「歴史の一部」となっているのであれば、この映画はもっと評価されるであろうのに、と残念です。
一方で、この映画を通して一人でも多くの方が、チベットの人々について考えることができれば、よいとも思う。北京五輪のスローガンは「一つ世界、一つの夢」。彼らが言う「一つ」は一方ではチベット人という独自の文化を持った人々を力でねじふせて国家に組み込むことです。そして、彼らが言う「世界」にはチベット人はたぶん含まれていない。大国はいつの時代にも自分たちの論理を持っていて、それが世界の歴史をつくりあげてきた。日本も例外ではありません。それでも、中国の虚栄に満ち満ちた五輪を楽しむことはできない。
遠い将来、「歴史」が正しく中国を評価するようになることを、願います。
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プロフィール
Author:わさきち
にゃんこの舟盛りの映画・アニメレビューを独立させてみました。ほぼ連動してますが、こちらのが若干マニアックでクドイ(苦笑)かも・・・。
ネタばれは書きません。
何事もポジティブにとらえたい性質なので、批評は前向きです。
貶すところしかないようは作品は取り上げません。
こんなスタンスです。
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