レビューになりきれない映画評。でも、独自路線でまったりと語ります。  
 
 
 
 

重厚な”ドラマ”【ヒトラーの贋札】

ヒトラーの贋札ヒトラーの贋札
(2008/07/11)
カール・マルコヴィクスアウグスト・ディール

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(intro.)
1936年のドイツ、ベルリン。パスポートや紙幣など、あらゆる偽造を行うプロの贋作(がんさく)師サリー(カール・マルコヴィックス)。犯罪捜査局の捜査官ヘルツォーク(デーヴィト・シュトリーゾフ)に捕らえられた彼は、マウトハウゼン強制収容所に送られる。そこは犯罪者の送られる刑務所ではなく、ユダヤ人を対象にした収容所だった。(シネマトゥデイ)


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今年観る3本目のドイツ映画「ヒトラーの贋札」。
題80回アカデミー外国語映画賞受賞作品です。

私はまだまだドイツ映画初心者なのですが、いかにもドイツ映画らしい作りこみの秀作です。そう、「作りこまれている」というのがもっとも適当な表現でしょう。

ナチ統治下の収容所を扱った映画は多くありますが、本作は収容所は収容所でも「ベルンハルト作戦」として歴史に名を残した大事件の舞台を描いている。実話というから驚きなのですが、実話ならではの「逆説的な胡散臭さ」がまったくなく、極上の映画作品に仕上がっています。

この映画の原題は、"Die Fälscher"、英題は"The Counterfeiters"、文字通りの「贋札」。邦題では、これだけでは味気ない(?)ために、「ヒトラーの」と着けたのでしょうが、これが思わぬ効果をもたらしています。作品中にはヒトラーその人は出てこない。ナチについても、あるいはユダヤ人がどうのうに収容所に送り込まれたかについても、どのような待遇を受けていたのかについても、「具体的に説明する」という描写は一切ない。

ただそこで起こった出来事を丁寧につないでいくことで、観客には、その背後にある暗く重苦しい時代を感じる取らせるのです。
歴史から決して目を逸らすことなく、その流れに翻弄された「個」を描く。言葉で表現すれば簡単なように思われますが、他では見ない作り込み方です。

私はドイツやオーストリアなどの俳優さんはからきし分かりませんが、それでもまったく気にならないくらいに作品中に引き込まれます。誰が演じても同じというわけでは絶対になく、役者が作品と一体になっているのです。こういう方向は、ぜひ日本映画にも見習って欲しいと思うのですが、無理なんだろうなぁ・・・。

さて、実際の「ベルンハルト作戦」。当事流通した「贋札」は、ボンド全体の流通量の1割に達したとか。
恐ろしいことをやったものです。
「贋札」の肝は「紙」と「インク」だと聞いたことがあります。特に「紙」については手触りの違和感というものがなかなか克服できない。物語中でもサロモン・ソロヴィッチが紙質に苦慮しているシーンが描かれています。紙作りから、贋札の完成にいたるまでの「技術者魂」というものに、日本人と共通するものがあるなぁ、と感心。いえ、感心してはいけないのでしょうが・・・。

劇中に登場する印刷工のブルガー氏はまだご存命で、ジャーナリストとしてファシズムについての糾弾を続けておられるとか。歴史の生きた証言者、とは力強いものです。戦争は人の身体を傷つけるだけでなく、精神を狂わせる。贋札作りという犯罪に加担したものも、正義のために仲間を危険に晒したものも、どちらも善ではありえない。そんな不幸な世の中が、二度と訪れることのないように願うばかりです。

そして、この重厚な物語を極上のエンターテインメントに仕上げたドイツ映画の力に、多大なる感謝を。
Genre : 映画  Theme : DVDで見た映画
 
 
 
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にゃんこの舟盛りの映画・アニメレビューを独立させてみました。ほぼ連動してますが、こちらのが若干マニアックでクドイ(苦笑)かも・・・。

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